2019年 9月20日公開
『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』
映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』予告【2019年9月20日(金)公開】
まだ映画を見ていない方向けの感想
この記事は、映画冒頭部分のネタバレを含んでいます。また、比較対象として「君の名は。」のネタバレにも触れています。
しかし、それ以外はネタバレに触れることはせず、感想を書かせていただいてます。
この映画を見るか悩んでいる方の参考になれば幸いです。
HELLO WORLDとは?
日本アニメーションの次世代を担う才能、伊藤智彦監督。
『時をかける少女』『サマーウォーズ』で助監督を務め、
『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- 』を興行収入25億円の大ヒットに導いたのは記憶に新しい。
未来やテクノロジーへの深い造詣と確かな演出力を持ち、
今最も長編アニメーションが期待される伊藤監督の最新作『HELLO WORLD』は、
脚本に小説「バビロン」シリーズ、「正解するカド」の鬼才・野﨑まど、
キャラクターデザインに『けいおん!』の堀口悠紀子という傑出した才能が集まり、
新時代の幕開けにふさわしい“新機軸のハイスピードSF青春ラブストーリー”に仕上がった。制作を手掛けるのは『楽園追放 -Expelled from Paradise-』のグラフィニカ。 声優陣は、北村匠海、松坂桃李、浜辺美波という今最も旬な三人が牽引する。 それぞれアニメーションファンとして知られ、 実写でも繊細且つ鮮烈な青春・恋愛を見せてきた彼らだからこそ描き出せるドラマ感で作品に命を吹き込む。 音楽は2027Soundという、未だかつてない実験的なアプローチに挑戦。 まさに新世代アニメーションに相応しい音楽的アプローチが、 本作に心地良くも鮮やかな彩りを加えてくれる。
【公式サイト イントロダクションより引用】
いつもと違う始まり……
たまたま少し早めに映画館についた。
上映開始の12、3分前くらいだったと思う。
開場していたので入ったら、すでにこれから放映される映画の予告映像が流れていた。
あれ、こんなに早く流れるモノだっけ?
と思いながら席に着く。
すると開始10分前になった途端、スクリーンが白い背景に変わり、中央には映画開始までのタイマーカウントダウンが表示されていた。
主題歌が流れる中、減っていく数字。
私としてははじめて体験する演出だ。
とても力を入れている映画だ、そう実感させられた。
そんな映画の始まりだった。
役者の演技を生かす映像作り
メインキャストの声は声優ではなく、俳優。
声優ではなく、俳優・女優が声をあてる映画と聞くとどうしても演技が上手い下手の話になるが、この映画についてあまり気にならなかった。
監督が公式サイトでコメントをしているが、この作品はアフレコではなく、プレスコで収録したらしい。
アフレコは映像を見ながら演技をして音声を収録する方法に対し、プレスコとは映像を見ずに台本だけで演技をする収録方法である。
ゲーム収録ではよく取られる収録方法だ。
アプリゲームやアドベンチャーゲームのようにキャラクターの立ち絵だけで動きがなく、単発のセリフであればそこまで演技力は必要ないが、映画はそうもいかない。
映像がない分、絵に合わせて演技ができないので演者の演技力が問われる。ロケーションの中で演技をする実写映画やドラマともまた違う。
どちらかというと舞台のように制約された環境の中でやる演技に近いかもしれない。
物語を台本だけを頼りに演技を作っていくので、役者の解釈や表現力がそのまま演技につながるのだ。
ただ、逆に絵を作る側からすれば、声が逆に絵作りのガイドとなり、演技に合うように映像を仕上げていくことができるというメリットがある。
また、アフレコ収録というなは映像が先にある分、尺の制限がある場合が多い。アニメの現場では、アフレコ用の映像を作って、アフレコのあと、音声に合わせて口パクを修正するということもあったりするぐらいだ。
そう考えると、プレスコは映像に左右されず、演者がのびのびと演技をすることができるとも言える。
この映画は、アニメの映像に合わせて変に作った声の演技をしているなどということはなく、自然体な演技だったと言える。
何度も起こるひっくり返し
内容については思っていた以上に二転三転する話で、えっそうなの?!という驚きが何度もあった。
私は映画館でみた予告映像でしかこの映画に関する知識はなかったため、余計にそう感じた。
ネタバレだが、まずこの映画は予告で、10年後の未来からやってきた自分が、これから付き合うことになる彼女の命を救うために過去までやって来た、ということを説明をしているが、これは正確ではない無い。
主人公は現実世界で記録されたバックアップデータの中の世界の住人で、未来からやってきあという未来の自分はデータの外、つまり現実世界からやってきた自分なのだ。
これが開始冒頭でまず明かされる。
「君の名は。」で例えるなら、瀧くんと三葉の時間軸がずれていたというをいきなり知らされる感じだ。
そんな事実が冒頭から突きつけられるのだから、物語が進行するに従って、さらなる驚きが待っていることは想像に難く無いだろう。
実際そうなのだ。
2度、3度、4度と驚きの展開が待ち受けている。
キャッチコピーの
「この物語は、ラスト1秒でひっくり返る——」
にふさわしい作品である。
ただ、設定はその分複雑に感じ、理解が追い付かないところもある。
ただ、それはつまらないということにはつながらず、あれはどういうことだったんだという考察をしたくなる好奇心につながる。
私は本格的なSFをそこまで嗜んでいないので、比較対象がないが、他の人の感想を見ているとインセプションなどを想起させるないだそうだ。
「HELLO WORLD」オリジナル・サウンドトラック [ 2027Sound ]
3Dキャラクター表現の課題
データの中の世界ということで、サマーウォーズやソード・アート・オンラインのようなバーチャル世界ならでは活劇もあり、演出の派手さや多彩さも魅力的だ。
残念なのは、キャラクターのアニメーション。この映画は3Dアニメなので、2Dのアニメと違い、動きに嘘がつきにくく、慌ててキャラクターが腕を早く動かすなど、アニメ的なデフォルト表現が滑稽に見える時があった。
キャラクターモデルも今の時代を考えると最高峰の品質とは言い難い。
アニメーションと合わせて、怒涛の展開の中でキャラクターが悪目立ちして物語に没入しにくいといくこともあった。
ただ、キャラクターデザインがけいおんの堀口悠紀子ということもあり、女の子はかわいい。カットによっては品質の高い2Dアニメと遜色ない絵のところもあった。
また、背景は3Dモデルっぽさがなく、高品質な手書きの2Dアニメの背景と遜色ない美しさを持っている。
総評
この映画は総じて品質が高く面白い。物語は複雑だが、驚きの展開が仕掛けられており、見た後もあれはどういうことだったんだ?という気持ちが心を支配する。
ただ、キャラクターのモデルと動きが少し物足りない、という評価を私はつける。
どうやら小説版まで出ているようなので、理解の追い付かなかったところをこれから補完していければと思う。